研究会詳細

タイトル
第6回FGセンター研究会(2022年03月18日)
言語
日本語
詳細

「ファイナンシャル・ジェロントロジー:Clinical Neuropsychometricsからのアプローチ」報告
講師 上智大学 総合人間科学部心理学科 教授 松田 修 氏

臨床神経心理学と心理測定学を融合させたClinical Neuropsychometrics(臨床神経心理測定学:CNPM)の視点から、1)フィナンシャルキャパシティ(financial capacity:FC)と知能・認知機能との関係、2)知能・認知機能の老化がFCに与える影響、3)神経認知症(認知症、MCI)がFCに与える影響、4)認知リハビリテーションを応用した高齢者のFC支援の4点について演者の考えを述べた。

講演ではこれら4点の議論に先立ち、なぜCNPMの視点から、高齢者のFCをめぐる諸課題と支援を論じようと考えたのかについて2つの理由を述べた。第一の理由は、臨床神経心理学の視点から、老化や神経認知症に伴う神経心理学的変化を理解することが、高齢者のFCの変化やメカニズムを理解する上で重要であり、また、実際の支援に際しては、認知リハビリテーションの基本的アプローチの一つである外的代償法の視点が不可欠と考えたからである。第二の理由は、心理測定学の視点から、FCおよびFCに関連する認知機能を適切に評価することが、高齢者の日々の生活における安全・安心を左右する重要な判断に影響を与えると考えたからである。

知能検査や認知症スクリーニング検査でFCを評価する際には、各検査から算出される数値の仕組みや、それによる判断の限界を十分に理解しておくことが、こうした判断を行う専門家にとって有益である点を講演では特に強調した。最後に、あおぞら銀行様と本学の共同研究の一部を紹介し、人生100年時代といわれる今、高齢者の資産管理に金融機関としてどう取り組んだらよいか、私見を述べた。