研究会詳細
タイトル
第10回FGセンター研究会(2022年08月26日)
言語
日本語
詳細
消費者脆弱性の制御と契約法
-誰もが取引の主体でいられる社会と法環境を考える
講師 法政大学経済学部教授 菅 富美枝先生
【ご講演要旨】
消費者は、誰でも一生の間に、消費者脆弱性を持ったり、脆弱な状況に陥ったりする可能性を有している。だが、潜在的に「脆弱な消費者」であるとしても、契約勧誘に際しての事業者の態様、カスタマーサービスのあり方、商品・サービスの設計如何によっては、そうした脆弱性の発現が抑制されることがある。菅先生は、従来の発想を転換させ、事業者や市場の側でプロアクティヴな動きを試みることによって、積極的に消費者脆弱性を制御ひいては解消し、あらゆる人を市場から排除せず包摂しながら、かつ、搾取を許さない社会・法体制を整えることによって、「すべての消費者にとって公正な (fair)」取引環境を構築することの重要性を強調された。国連障碍者権利条約12条に代表されるような「意思決定支援」や 「社会的障害」といった概念、「合理的配慮」義務、SDGs10における「不平等の削減」等に関連する知見も活用し、広い意味での消費者法制と社会福祉法制の融合を意識する必要性について考察された。
日本ではまだ 金融と脆弱な消費者と福祉の話が個別に議論されているが、イギリスを見習い、いかに市場のルールにおける合理的配慮を定着させるかが重要であることを参加者一同認識した。
※参考文献 菅富美枝『新消費者法研究――脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制』(成文堂、2018 年) 菅富美枝『イギリスの成年後見制度にみる自律支援の法理』(ミネルヴァ書房、2010 年)