研究会詳細

タイトル
第4回FGセンター研究会(2021年06月25日)
言語
日本語
詳細

「“The Heterogeneous Effect of Financial Education and Literacy on Investment Behavior in Japan”― 投資経験確率に対する過去の金融教育の効果についての実証分析」報告
講師 慶應義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター訪問研究員 荒木宏子氏

 慶應義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター訪問研究員 荒木氏から日本人の金融教育の経験とその後の金融市場への参加との関係についてご講演頂いた。
 各設問の難易度や識別力を加味したより正確な金融リテラシー能力で評価した結果、日本人の金融リテラシーは60代後半までは年齢と共に上昇し、70代を過ぎると下降する「逆U字型」であること、ピーク年齢が諸外国調査より高齢であること、さらに、高齢者の金融リテラシーが、2019年の調査では、2016年調査に比べて向上していることなどが報告された。
 次に、荒木氏の最近の研究から、金融教育効果の個人間における不均一性を踏まえた推計手法を用いて、日本人の家庭や学校・職場における金融教育経験や行動経済学的特徴と、その個人の投資経験との関係についての検証結果が報告された。「金融リテラシー調査」の回答者は、投資行動のメカニズムが異なる複数の部分集合(グループ)に分けることが出来て、その集団ごとに金融教育の効果が異なっていることが明らかとなった。学校や職場での金融教育経験はあらゆる人のリスク性資産への投資確率を押し上げるが、とりわけ、若く、貧しく、教育年数の低い集団に対して、最も強く投資を促す効果を持つ。一方で、家庭での「お金の管理」に係る教育は効果がより異質であり、この経済的に脆弱な集団に対してのみ、リスク性資産への投資を踏みとどまらせる効果がある。荒木氏は、国をあげての金融教育導入がますます熱を帯びる中で、上記のような金融教育効果の異質性を踏まえ、教育対象や内容の別による詳細な検証と議論の蓄積が必要だと結ばれた。